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表面処理とは
表面処理とは、工業技術の進化と共に発展する技術です。「装飾性」「機能性」あるいはその両方を実現するため、金属・無機・有機材料の表面に、金属、有機物、酸化物などを付与する改質技術 です。数ある表面処理の中でも「めっき」は一番身近なものと云えるでしょう。
めっき屋さんは、めっき施行はもちろん、複数の表面処理業務を行います。新しい素材であれば、それに合わせて新しい表面処理が追加されたり、常にお客様のニーズに応えられるように、改善・改良にも積極的に取組んでいます。
下記の分類表は、一般的なものですから、参考程度にご覧ください。当社がこれらの処理を全て行っているものではありません。
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電気めっき(電解めっき) | 金属イオン
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学術的には電気化学、技術的には電解工業の一分野です。電気めっきは、水溶液、溶融塩浴からも行われます。
原理は、金属イオンを含む水溶液(めっき液)中で、めっきしようとする製品に電気の還元作用を利用して、金属皮膜(めっき皮膜)を形成します。
装飾めっき、防食めっき、機能めっき、工業用めっきがあり、微小部品から大型製品まで広い分野で採用されています。
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化学めっき(無電解めっき)
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電気を使用せず、還元反応という化学的手法で金属皮膜(めっき皮膜)を形成します。一部の素材を除き、金属から非金属に至るまで広くめっきが可能です。
膜厚精度は比較的均一ですが、皮膜生成速度は遅く、適切な前処理を必要とします。金属の標準酸化還元電位(イオン化傾向)の差によって生じる「置換(浸漬)めっき」と、還元剤を利用する「化学還元めっき」の2つが良く知られています。
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溶融めっき(溶融金属めっき)(ホットディップ)
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亜鉛・錫・アルミニウムなどの金属が溶融した状態(高温でどろどろの状態)の中へそれより融点の高い被堆積物(素地金属)を入れ、融着、浸透させて引き上げる方法です。身近なものに、金属バット、トタン、ブリキなどがあります。
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化成処理(化学皮膜)
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硫化や酸化などの化学反応を利用して金属製品に薄い硫化物や酸化物の皮膜を形成するもので、金属着色や防錆、密着性を向上させる塗装下地としても用いられる方法。
亜鉛めっき後のクロメート処理、リン酸塩皮膜(パーカーライジング)、鉄や鋼製品の黒染め、アルミニウムのクロム酸皮膜、古代色処理などがあります。
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陽極酸化処理
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軽金属に対する表面処理法で、電解液中で製品を陽極側にして電解し、酸化皮膜を生成する方法です。光の干渉によって色彩を作りますので、紫外線による変色はありません。表面硬度の向上は見込めますが、酸化膜の膜厚自体は非常に薄いため、磨耗性は低いです。アルミニウムにおける「アルマイト」が代表的です。
アルミニウムやチタンなどは、自然に酸化膜ができて素材を保護していますが、酸化膜をコントロールする事によって色彩を変化させる事が出来ます。代表的なものに、サッシュやドア、その他 眼鏡枠、計測機器など広く利用されています。
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真空めっき法(PVD法「物理蒸着法」)(物理気相成長法)
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真空蒸着
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真空中でめっき金属を電子ビーム、抵抗加熱などを用い加熱蒸発させ物理化学的に皮膜を形成させる方法で、スパッタリングより前に実用化された成膜技術です。光学部品の発展に関わった技術で、カメラやメガネのレンズ、ビデオテープ、食品の包装材、装飾用などにも使用されています。
光学レンズにおいては、特にメガネレンズの進歩が目覚ましく、実に7層にも及ぶ多層コーティングが施されています。ちなみにメガネレンズを蛍光灯に照らすと少し、紫、青、緑色に見えるのは、健康な感じを出すため人為的に着色されているからで、東南アジアなどでは、暖色系の色が好まれているらしく、国ごとに違いがあるようです。
・分子線エピタキシー法(MBE法) ・抵抗加熱蒸着 ・電子ビーム蒸着 etc..
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イオンプレーティング
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チタンなどの金属を電子ビームにより高真空中で加熱蒸発させると、この蒸発金属及びガスは、プラズマ中でイオンとなります。
化学反応が促進され、大きな運動エネルギーとなったイオンは、マイナス電子の加えられたワークに衝突し、複合化合物として密着性の高い 硬質の被膜を形成させる方法です。
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スパッタリング
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真空中に不活性ガス(主にArガス)を導入しながら基板とターゲット(成膜させる物質Cr・Tiなど)間に直流高電圧を印加し、イオン化したArガスをターゲットに衝突させて、はじき飛ばされたターゲット物質をワークに成膜させる方法です。
また、Arガスと共に微量のO2・N2ガスを入れることにより、反応性スパッタリング(TiN, TiC, CrNなど)を行うことができます。当社は、この原理に磁界を利用したマグネトロン スパッタリングと多数のプラズマ発生源をもつイオンガン スパッタリングを行っています。
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化学気相めっき法(CVD法「化学蒸着法」)(化学気相成長法)
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常圧または減圧下で、揮発性金属化合物と還元性ガスとの加熱分解及び水素還元反応により金属皮膜などを形成させる方法です。
ガスの組合せにより多様な被膜が得られます。
熱・光・プラズマ・レーザ etc..
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イオン注入(イオンインプランテーション)
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原子をイオン化して高電圧で加速して、そのイオンビームを物質にぶつけてイオンを物質の中に閉じ込め、材料の性質を変えることによる表面改質処理法です。
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表面硬化(熱処理)
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金属を加熱や冷却によって生じる結晶変異(変態)の特性を利用して、金属表層面を変質させて耐磨耗性や疲労強度などを向上させる処理です。熱処理の種類として、「焼ならし」「焼入れ」「焼戻し」「焼なまし」などがあります。
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溶射
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紛体を高温ガス、プラズマ中で溶融(軟化)させ、微粒子状して加速、衝突させて、凝固・堆積させる皮膜を生成させる処理です。
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塗装
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金属加工における塗装の目的は、表面保護、着色、耐候性、密着性などがあり、これらを複数の目的で施行しています。最近は機能性塗装として、導電性の付与、非粘着性塗装、潤滑性塗装などの機械的性質の改善も行われています。
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静電塗装
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被塗物と塗料噴霧装置の間に静電圧をかけ静電界を作り、静電気の吸着作用により塗料に帯電させて塗着させる方法です。仕上がりが美しく、均一性に優れていますが、塗装面以外への入り込みが起こりやすいことがあります。
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粉体塗装
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溶剤を使用せず、固体の塗料微粉末を塗装し、塗料の融点以上に加熱して被塗物表面に溶着する方法です。有機溶剤の毒性や公害を回避でき、1回の塗装工程で厚い塗膜が得られるのが特徴です。
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電着塗装
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塗料槽内に製品を浸漬して、製品と対極との間に直流電流を流して塗料を製品に電気的に塗装する方法です。
他の塗装と異なり、電気的な塗装である為、製品へ均一な膜厚を施す事が出来、また5〜20μm程度の範囲で膜厚をコントロールする事が可能です。顔料または染料を使用しているため様々な色彩に対応する事ができます。
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焼付け塗装
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溶剤を揮発させ、塗料を固化する際に熱を加えることにより乾燥を早める塗装方法です。密着性、耐候性は優秀ですが、装置が大がかりになることや、120℃以上の熱を加えないと硬化しない塗料を使用するため、用途が限られます。
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金属浸透
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金属の耐食性、耐酸性、耐摩耗性などを向上させる目的で、製品を加熱して、その表面に被覆金属を付着させ、同時に拡散によって合金層を形成する方法です。
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印刷
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一般的な平面印刷から、金属、ガラス、眼鏡枠などの立体物、更には半導体チップの配線といった、生活のあらゆる場面に印刷技術は応用されています。
凸版印刷、凹印刷、オフセット印刷、スクリーン(シルク)印刷、パッド印刷などがあり、当社では、球面印刷が可能な「パッド印刷機」を保有しております。
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パッド印刷
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スクリーン印刷では難しい、精密部品の細かな曲面などに、柔らかい樹脂製の版(パッド)を押して印刷する転写技術です。原理としては、凹版プレートの凹面にインクを流し込み、そのインクをパッドが印刷物へ転写するという方法です。
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ホットスタンプ(箔押し法)
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金属やビニールなどの箔を高圧、高熱で一瞬にして印刷する技術です。メタリックな装飾用途に利用されています。
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ショットピーニング
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無数のショット材を高速度で金属表面に衝突させ、梨子地模様の痕跡を付ける事によって、表面硬度、耐摩耗性、放熱性、耐応力腐食割れ特性の向上、流体抵抗の減少などの金属表面を改質する方法の一種です。
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表面創製
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エッチング
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金属の表面を溶解除去してパターンを得る処理。薄板や微細加工、高硬度材料の加工も可能です。用途としては、電子基板回路の製作、半導体の製造。装飾加工の場合、建築金物など。
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エンボス(レリーフ)
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金属板を金型を使いプレスする事で浮き彫りを作る方法と、レーザー熱を利用した加工法があります。当社は、2D・3Dレーザー精密加工装置を保有し、よりリアルで精密なレリーフ加工を実現しています。
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研磨
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機械研磨・化学研磨・電解研磨・化学機械研磨などがあります。良く知られている方法は、バフ研磨など機械的な研磨方法があります。
当社では、電子部品関係のより精密で複雑な部品のめっき事業に伴い、機械研磨だけでは対応できないため、電解・化学研磨に注目しています。
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清浄
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洗浄、除錆に大別され前者には、「湿式洗浄」と「乾式洗浄」があり、主に油脂類の除去が目的です。
後者は、「浸漬除錆」「ブラスト処理」「バレル研磨」などがあり、スケールの除去、錆の除去が目的です。ブラスト処理では、サンドブラストが広く知られており、本来の目的意外に、めっきのつや消しなどの目的にも利用されます。
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その他
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分類表には入れていない表面処理も沢山あります。「ホットウォール法」などの新しい蒸着方式や、定番の「スピンコート法」「ディップ法」、あるいは、これも基盤プリントの定番である「インクジェット法」などの印刷方式など、細分化すると切りがないのと、色んな工学分野によっては分類方法もその用語も違ってきます。
ただ ひとつだけ共通する事は、これからの表面処理において「環境」というキーワードが、どの工学分野においても重要な要素になるでしょう。あくまで、当社の参考分類表としてご理解ください。
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冒頭にも書きましたが、表面処理は工業技術の進化と共に新しい手法が誕生します。これからも、色々な用語が誕生してくることでしょう。
PVD法の一般的な比較
イオンプレーティング | 真空蒸着 | スパッタリング | |
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堆積される物質 | 金属、合金 一部の化合物 |
金属 一部の化合物 |
金属、合金、化合物 サーメット セラミックポリマー |
堆積プロセス | 真空プラズマ | 真空蒸着 | 真空プラズマ |
膜の性質 | ピンホールが少ない | 均一につかない | 綿密でかなり ピンホールが少ない |
界面の型 | 相互拡散層 または 緩慢な変化層 |
熱拡散がなければ はっきりしている |
比較的 はっきりしている |
膜の均一性 | △ | × | ○ |
堆積速度 | ○ | ◎ | × |
膜厚コントロール | ○ | × | ○ |
複雑な形状の表面 | △ | × | ○ |
真空圧(hPa) | 10-3 〜 10-4 | 10-3 〜 10-4 | 10-3 〜 10-5 |